活動報告

昨年度の部会活動実績

2023年度部会活動実績

出版印刷部会

出版科学研所による2023年(1~12月期累計)の紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、1兆5,963億円と前年比2.1%の減で2年連続の前年割れとなりました。このうち紙が6.0%減の1兆612億円と不振。対して電子出版が同6.7%増の5,351億円と前年を超えましたが、紙の落ち込み分をカバーできませんでした。紙の内訳は、書籍は同4.7%減の6,194億円、雑誌は同7.9%減の4,418億円で、共に振るいませんでした。一方、電子出版は、前年に続き伸び率は鈍化しましたが、引き続き堅調。全体の9割を占める電子コミックは同7.8%増の4,830億円と好調でした。
こうした中にあって2023年度の出版印刷部会では、従来からの「物流」「雑誌BCP」「本・印刷の魅力の発信(らぶっく)」の分科会活動を継続的に実施しました。
出版業界全体の継続的取組みとしては、従来の「出版業界に関わる印刷・製本での課題」における5つの課題の進捗確認とともに、新たな課題の討議も行い、「データ保管」や「原版保管」に対するアンケートを実施、有償化やルール化の検討を行いました。また年度内にデジタル校正機の勉強会も実施しました。
(5つの課題とは、①オフセット平台校正機の廃台とデジタル化移行 ②DTP制作アプリケーション推奨環境への移行 ③用紙予備枚数適正化 ④枚葉用紙の「スキット」納品 ⑤書籍パレット共通化)
年度後半では、「物流分科会」において検討を重ねてきた「物流2024年問題に伴う課題解決に関するお願い」を日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本出版取次協会へ説明しました。内容的には、①納入時間の指定緩和、②納入指示書(配本通知)の早期提出、③納品時における付帯作業の軽減、となります。
また「労務費上昇分の価格反映に関するお願い」の文書も作成し展開しました。
【物流分科会】
2023年度の分科会活動としては5月、6月、7月、8月、10月、11月に6回実施、主に「物流2024年問題」における会員各社の課題を洗い出し共通認識のもと、年内を目途に業界団体に対する要請文を作成し、3団体に提起し賛同が得られました(前述参照)。1月には日本雑誌協会主催の「生産環境委員会」に上程するとともに、2月には「新文化」「文化通信」の業界紙の取材にも対応しました。
【雑誌BCP分科会】
  前年度に引き続き、2023年度もオンラインによる「緊急協議開催訓練」に向けて、日本雑誌協会・日本出版取次協会との共同分科会を通じて有事における対応を図りました。23年度の重点課題としては、日本雑誌協会非加盟出版社への継続的なコンセンサス醸成と第1回協議後の対応シミュレーションが挙げられます。それらを踏まえ、本年2月の「緊急協議開催訓練」では3団体で20名余りがリモートで参加、その後の総括会議では、24年度も23年度の課題を踏まえて、継続実施することが決まりました。
【らぶっく分科会】
昨年度活動を停止していた分科会活動は、本年度7月より新たに若手メンバーを募り、新リーダーのもと10社17名にてスタートしました。メンバー間の意見や希望を調整し、2つのWG(イベント・SNS)に分かれて活動してきました。「ブックサンタ2023」も前年度同様、ボランティアなどの活動はなく印刷部分だけの提供でしたが、拡材の製造提供予算も前年度より増額しました。その結果、参加店舗数1,683店舗、寄付冊数127,443冊(リアル書店104,890冊、オンライン書店17,815冊、クラウドファンディング4,738冊)、お届け冊数は80,000冊と前年度より大幅に増加しています。
※以上の分科会活動の他、例年通り日本雑誌協会からの要請を受け、四半期毎に印刷各社へ雑誌印刷部数証明の調査をお願いし、年度の「マガジンデータ」の発行に協力しました。
 

教科書印刷部会

2023年度は部会を通じて業務に関する情報だけにとどまらず、会員相互の資質向上に役立つ部会活動を図って参りました。年間活動としては2回の見学会を含め2ヵ月に1回の割合で6回開催しました。
《主な活動内容》
 1.「教科書製作の改善提案」冊子の見直し、教科書協会への提案、発行、配布
  2017年度以降休止となっていた「教科書製作の改善提案」について、最新版の要望もあったことから、2023年度は部会の場を通して、メンバーと内容の改訂を検討。改訂内容は、現状に合わせた工程内容の見直し、古くなった表記(アプリケーション、バージョン等)を更新。思わぬトラブルの防止、業務の効率化を主眼に置き、印刷会社から出版会社に向けた要望事項も含めた内容としています。
昨年12月に改訂版として「教科書製作の改善提案2024」を100部印刷(発行は1月)、教科書協会の会合の場にて紹介した上で協会会員各社様より必要部数の注文を受け付けました。2024年に入り、更に100部増刷し、希望の各社様に配布を行いました。
2.「R6年度 小学校見本本」の調査
 15発行者、13教科、253書目のR6年度小学校見本本を対象として、意見交換を実施。R6年度の特徴として、全教科書にQRコードが掲載されデジタルとアナログのハイブリット版となった事が挙げられます。また、一部の教科書会社はカラーバリアフリーを採用し、障害者への配慮も積極的に取り入れていました。
3.「教科書販売株式会社(教販)」の見学会を実施 (2023年11月7日)
  埼玉県越谷市にある「教科書販売株式会社(教販)」の見学会を実施しました。教販は昭和24年に設立された小中高等学校の教科書・教師用指導書および学習参考書・教材関係を専門に取扱う取次販売会社です。全国53特約供給所や約3,200の取次店への配送出荷を主な業務としており、それぞれの地区の採用内容に合わせて仕分梱包し出荷しています。誤封緘防止のため、バーコード検査、重量計などを使用し管理されていました。今回は配送・仕分・梱包・保管などの現場の様子を見学しました。
 4.「ミズノ・プリンティング・ミュージアム」の見学会を実施 (2024年3月26日)
  東京都中央区にある「ミズノ・プリンティング・ミュージアム」の見学会を実施しました。同ミュージアムは昭和63年9月に開設され、「ミズノプリテック(株)」の水野会長が長きに亘り私的に蒐集された貴重な歴史的印刷物が展示されています。また印刷物だけでなく、世界各国の多種多様な印刷機、断裁機、活字、道具類も併設展示され、丁寧な説明をいただきながら見ごたえのある見学会となりました。
 

商業印刷部会

2023年度の商業印刷部会は例年通り、「運営委員会」と3つのグループ会(CP研究会・IRグループ会・R&D会)の活動での構成により運営されました。「運営委員会」では、商業印刷部会全体(31社)を対象とした3回の「勉強会(セミナー)」、10月の「商印ゴルフ会」、夏季・期末の2回の「懇親会」、12月は従来実施していなかった会員企業の「視察研修会」、1月の「新年講演会/交歓会」、2月には会員各社を対象とした「商印アンケート調査」の結果報告を実施しました。なお、年度末での運営委員会では、経産省の要請を受け、取引先各位向けに「労務費上昇分の価格反映に関するお願い」の文書を商印運営委員会として作成し展開しました。2023年度、運営委員会は臨時開催を含めて2ヵ月に1回の割合で開催し、計6回開催しました。「勉強会(セミナー)」「視察研修会」「新年講演会/交歓会」の内容については以下となります。
・第1回 勉強会 … 電通メディアイノベーションラボ 研究主幹 北原 利行氏
(7月21日)     「2023年のメディアと印刷市場展望」
・第2回 勉強会 … 日本WPA(日本水なし印刷協会)事務局長 小川 勇造氏
(10月17日)    「印刷物のカーボンオフセットシステムの紹介」
・第3回 勉強会 … リハプライム株式会社 代表取締役社長 小池 修氏
(3月4日)      「日本一社員がやめない会社の社長が教える社員定着の秘訣」
・視察研修会 … 小松印刷グループ髙松本社訪問・見学(本社工場、本社紙器加工、綾川工場)
(12月8~9日)  (参加人数:19名、事務局3名)
・新年講演会/交歓会(1月18日) … プロゴルファー・解説者 村口 史子氏 テーマ:「私とゴルフ」
なお、年度末には、所属人数のバランスも鑑み、3つのグループ会の運営を見直しました、24年度からは、3グループ会のうち、2グループ会(CP研究会・IRグループ会)を統合し、新たなグループ会を発足。「CR(コマーシャル・リサーチ)会」の新名称で運営していくことで、運営委員会の承認が得られました。
2023年度の3グループ会での活動内容としては共通テーマを選出し相互の連携を図りました。23年度は「物流2024年問題」と「人手不足対応」を共通テーマとして掲げ、グループ会毎にメンバーにヒアリングを実施、その内容を共有化しました。他に、グループ会独自で開催した勉強会や見学会は以下となります。
【CP研究会】
・6月16日(金)…北区の飛鳥山公園内にある「紙の博物館」の見学会。
・11月24日(金)…江東区有明の「そなエリア東京」 の見学会。
【IRグループ会】
・6月29日(木)…埼玉県川口市にある㈱アラジンイデア(川口ファクトリー)の見学会。データ処理から印刷・
         加工・セット作業・発送までワンストップで対応できるBPOサービスの紹介。
・11月8日(水)…江東区の㈱ムトウユニパックの女性活躍紹介の勉強会。異業種「養蜂事業」の進出。
【R&D会】
・11月1日(水) …千代田区霞が関の「警視庁」の見学会。

紙器印刷部会

1.市況動向の把握と共有
・「得意先業界の景気状況」を、四半期毎に報告いただきまとめたものを部会で共有しています。
2023年1月~2023年12月、前半は菓子、食品、化粧品さらにインバウンドやお土産関連が好調 でしたが、食品は相次ぐ製品価格値上げにより低価格品やPB品への需要大でNB品が大苦戦。4 月以降はマスクを外す機会も増え、グミ・ガム・錠菓等のエチケット需要が高まりました。7月 は猛暑によりチョコレート関係は低調、乳製品は値上げによる買い控えの影響で減少、10月以降 も生活者の節約志向が影響しトイレタリー関連は不調ですがインバウンドの回復でホテルのア メニティや業務用洗剤は好調、医薬品もコロナ前の水準に回復しました。
・「取引慣行改善の取り組み」は、昨年同様すべての会社が価格対策に注力し、原紙やユーティリ ティの値上げ交渉、価格転嫁に注力しました。また2024年物流問題に対し、梱包形態の変更や 納入時間指定解除等の申し入れの実施と関連情報収集を行っています。

2.その他の取り組み
・タイムリーな情報共有として、「日本の包装産業出荷統計(2022年度)調査結果について」や新聞各紙より、関連のある情報を共有しています。
・今年度も視察見学会を企画し、2023年8月に大王製紙株式会社の三島工場を訪問しました。紙・板紙をパルプから一貫生産していて、生産量は年間約210万トン、国内紙・板紙生産量の約8%のシェアを有しており、世界最大級の製紙工場で東京ドーム約36個分の広さをバスで移動して無人の高速製造ラインやトイレットペーパーの製造工程を紹介いただきました。

3.若手育成セミナーの開催
・2024年2月6日、軟包装部会と共同で90分のセミナーを如水会館にて開催しました。テーマ及  び講師については両部会員の投票により選考し「生成AI」をテーマに、株式会社エーアイスクエ ア 代表取締役の石田正樹氏に「Chat GPT(生成AI)で変わる世界」についてお話いただきました。 「コールセンターにおける顧客対応の要約」や「会話からのナレッジ抽出」などの具体的な事例 をお聞きして、最終的には判断する人間が大事であり、個々人が正しい「問い」を立て、聞く能 力、アウトプット評価能力を高め、人間力を磨くことが大切だと学びました。
・今回は、若手社員を各社との交流の場にさせたいという要望もあったため、開催を両部会合同の新年会の日程に合わせ、セミナー終了後に約15分の名刺交換の時間を設け、その後は110名での新年懇親会となりました。

軟包装部会

1.原材料価格動向の把握
・ 国産ナフサ価格の状況は、2020年4~6月期の25,000円/KL(最低値)から2022年4~6月期の 86,100円/KL(最高値)まで上昇が続きましたが、2023年度は第3Q 63,600円/KL迄下落したもの の第4Q 72,800円/KLとなり、価格交渉はいつを基準にすべきか等、難航しています。

2.情報共有と取引慣行改善活動の推進、他
・毎月の部会では各社市況報告を行い、前半の売上は前年プラスも、仕事量は減少し夏場も厳しい暑さで反応は鈍く、物量が不足しているため工場の機械を一部停めたところもあり、且つ製品の上りも早く、在庫が増えてしまいました。後半は菓子が好調も食品を中心にPB品とNB品との好調・不調の差は変わらずに大きく開いていますが、短納期の依頼が増えていたため在庫は削減できました。
・原材料の値上げが厳しい中、今後の物流問題なども視野に入れて価格交渉を続けています。

3.価格反映に関するお願い
・昨年来、原材料費やエネルギー価格の高騰が続く中、会員企業の自助努力の範囲を超え、各社の経営を圧迫している状況をご理解いただくために2023年5月「原材料費・光熱費・輸送費 高騰分の価格反映に関するお願い」を作成しました。
・また2024年2月の部会時に労務費の価格転嫁が進まないという課題を受け、製品の安定供給を行うためには、印刷業界全体のサプライチェーンにおける人材不足解消のための賃上げが急務の課題になっていることを伝えるため同月「労務費上昇分の価格反映に関するお願い」の書面を部会名で作成し、紙器印刷部会にも共有、各社で活用いただきました。

4.LCA(ライフサイクルアセスメント)勉強会の開催
・2024年3月21日、紙器印刷部会と液体カートン部会の方にも声をかけTOPPAN株式会社で包装の LCAツールを運用されている部署の方に60分のオンラインセミナーを依頼しました。きっかけは、 部会の中で取引先からLCAを用いた製品単位での可視化(カーボンフットプリント)へのニーズ が高まってきたということで、各社どのように取り組んでいるかという話題になり、共通課題と して捉え、LCAの勉強会を企画し、国内外の動向や企業での取組み状況の紹介から始め、TOPPAN 株式会社が運用しているSmartLCA-CO2の活用事例を紹介いただきました。17社140名の方に聴 講いただき、後日希望者に資料を送付、必要に応じて追加のプレゼンテーションを実施すること となりました。部会の中で出てきた課題を勉強会に繋げられたとてもよい流れで、今後もこのよ うな機会を作りたいと思います。

液体カートン部会

1.運営委員会
・ 今年度も6月・9月・3月の委員会をZoomとの併用にて開催し、技術委員長、環境委員長より各々の活動報告を受けました。また毎年1月は全体会議として委員全員が集まり活動内容を共有しています。技術委員会からは「消費者の素朴な疑問に対する回答事例集」の完成と来年度の取組みテーマを報告、環境委員会は、年間活動と来年度の活動計画及びアルミ付飲料用紙容器のリサイクルの現状を報告しました。
2.環境委員会
・アルミ付飲料用紙容器のリサイクルについて、昨年同様事業委託先のNPO法人「集めて使うリサイクル協会」と連携して施策を推進しました。2022年度の使用済みアルミ付紙パックの回収率は3.4%と3年間と変わらず、2016年をピークに0.9ポイント減少しています。
・「アルミ付飲料用紙容器のリサイクルフロー調査」に係る組成分析調査は、昨年度と同じ場所で2回実施しました。11月埼玉県朝霞市にある山田洋治商店にて練馬区の行政回収品530㎏とスーパーの店頭回収30Kg、今回は、技術委員も初参加してリサイクルの現状を知る良い機会となりました。2月はコープデリ連合会の店頭回収分を対象に野田エコセンターにてアルミ付・なし混合回収品540㎏を仕分け分類して数値化しました。この調査結果を含めた「2023年度アルミ付飲料用紙容器のリサイクルフロー調査報告書(2022年度実態)」を3月末に発行しました。
・「酒パックリサイクル促進協議会」は、4月・9月・2月に運営委員会、7月定期総会、11月上旬に第43回情報交流会・広島地区見学会の開催となりました。運営委員会では調査部会・広報部会から活動報告をいただきました。情報交流会は、㈱島精機製作所「紙パックリサイクルで生まれた紙の糸について」他の講演をいただきました。
・「LL紙パックリサイクル推進研究会」は、5月・10月・2月に運営委員会、7月に会員全体会議を昨年同様Teamsで行い、情報共有化勉強会も3月末に動画配信で実施しました。
・12月6~8日に開催された「エコプロ2023」の来場者数は6.6万人。今回は展示方法を変え、壁面を利用し酒パックをアルミ付とアルミなしでマーク・構造図・内面サンプル展示等わかりやすさに配慮して、来場者に紹介しました。
3.技術委員会
・前年度からの継続テーマ「消費者の素朴な疑問に対する回答事例集」全15点の内容を討議し、完成させました。各社に活用いただき、新たに課題がでてきたら追加していく予定です。また、見学会も2回開催し、活性化及び知識を深める場づくりができました。
 

建材部会

1.4VOC自主表示制度の継続運用
・放散速度値の測定は、各社3年に1回ごとで検査測定を実施しています。今年度は3ヵ年の3年目につき、運用規則に則り会員6社を選定、6~8月に4VOC放散速度値の測定を実施し結果はいずれも基準値内でした。来年度は5社で実施予定です。
・4VOC製品登録件数は、2024年3月末時点で53,463件、2023年4月以降からの1年間では772件が登録されました。
・4VOC放散に関する自主表示制度運用細則を一部変更することにしました。費用に関し、2022年4月よりに登録システムを新しくしたことで、運用費が大幅に削減(1/10以下)されたため、各社の負担金も減額、この事から、金額算定方法を新たに決定し、その内容を反映させました。

2.化粧板用印刷紙の合法性証明制度の継続運用
・2015年11月より認定実施要領に則り、制度運用を開始しています。事業者認定に関しては3年に1回更新をお願いしておりますが、今年度の更新はありませんでした。 ・2023年度の証明書発行回数の実績は264回となりました。年度末には、各社より「合法性の証明された製品等の取扱実績報告」に発行回数を記入、捺印、提出いただき集計結果をHPに掲載しています。

3.部会活動で取組み
・今年度の部会開催は5回、内1回は資料送付のみとなりましたが、毎回環境委員の方も参加いただきZoom併用で新聞の情報共有、市況報告等を行いました。
・国内は、建材メーカー、住宅メーカーともに建材市況は総じて悪く、各社とも受注減となっています。同状況は残念ながら来年度もしばらく続く見通しです。
・海外は、欧米・中国の市況が悪化。また、スエズ運河が通れず、これが輸送費の上昇にも繋がり、輸出も厳しい状況です。
・部会員は関西地区の方も多く、直接顔を合わせる機会が少ないため10月に京都での見学会を企画しました。積水ハウスの「開かれた体験型研究施設」納得工房を訪問、CO2排出量削減のための技術を用いた窓ガラスや高齢者や妊婦の体験をして住環境の在り方改めて考える場等、各自が様々な気づきを得て思いを巡らせていました。終了後は食事会を開催し、初めてお目にかかる方とも懇親を深めていただけました。

情報セキュリティ部会

2023年度の情報セキュリティ部会の活動は、昨年同様、セキュリティ関連に係らず、幅広い業界における知識・知見を身につけることを第一義におき、それによって会員各社のビジネスが拡大していくよう、進めて参りました。また会員メンバーの日頃の意思疎通もスムーズに行くように、懇親の場も積極的にも設けて参りました。年間の開催回数としては、勉強会を2回(7、10月)、見学会を2回(9 、3月)、部会を1回(12月)開催し、年初の計画通りの部会活動を実現することができました。
【勉強会】
① 開催日 :  2023年7月6日(木)
   講 師 :  大塚 寛氏 (PST株式会社 代表取締役)
   テーマ :  音声病態分析技術のご紹介
   内 容 :  音声病態分析技術とは主に自律神経系を伝わり音声に影響する病気の特徴を音響解析して、その病態(病気の状態)を分析する技術であり、PST株式会社ではその研究開発を行っている。疾患に特異的な「音声症状」の定量評価化の技術(音声バイオマーカー)を使い、「心不全」「うつ病」「軽度認知障害」などの疾患の判別を行う技術を開発しており、実際の活用事例も踏まえて紹介頂いた。
② 開催日 :  2023年10月30日(月)
  講 師 :  馬場園 克也氏 (ユーデック株式会社 代表取締役)
  テーマ :  地域観光街づくりとグリーンスローモビリティ横展開のための新戦略
         沖縄北谷(ちゃたん)のチャレンジ
         内 容: ユーデック株式会社は、地域や街を発展させる支援やビジネス助言を提供する企業で、具体的には、シミュレーションソフトを行い地方都市などの商店街、駅、それに大規模集客施設における交通渋滞や様々な事象を解析することで、地域住民、自治体、その他関係機関の開発に対する理解を促す支援を行っている。今回は沖縄北谷(ちゃたん)地区で行っているグリーンスローモビリティ(GSM)の導入事例の紹介があった。
【見学会】
① 開催日 :  2023年9月15日(金)
  場  所 : 宇宙航空研究開発機構JAXAの施設 (茨木県つくば市)

② 開催日 :  2024年3月21日(木)
  場  所 : トヨタ産業技術記念館 (愛知県名古屋市)

資材部会

2023年度の国内経済は、コロナ5類引き下げにより、旅行や外食などの外出型消費には回復傾向も感じられましたが、物価高騰による支出抑制の影響は大きく、個人消費全体としては低迷しました。また、円安影響もあり、インバウンドはコロナ前の8割程度までV字回復し、訪日観光客数は2,507万人となりました。また、訪日客の旅行消費額は5兆2923億円で過去最高となりましたが、目的別では宿泊費が最も多く、買い物よりも宿泊や飲食、アクティビティーなど体験重視の傾向が強まっており、モノ消費の低迷を補うものとはなっていません。
こうした経済情勢の下、日本製紙連合会によると2023年1月~12月の紙・板紙の内需は対前年93.9%で、パッケージング用紙、グラフィック用紙ともに前年割れとなりました。新聞用紙は、広告のネットへのシフトに加え、夕刊廃止の動きによる発行部数の大幅減により対前年90.2%と落ち込みました。非塗工印刷用紙は、物価高や価格改定等の影響もあり、商業印刷を中心に需要家のコストダウン強化による使用量削減が進み、対前年89.5%でした。塗工印刷用紙は、2023年はデジタル化に加えて価格改定や物価高に伴う販促費の抑制により、カタログ・チラシ・パンフレット用途等が減少し、対前年90.7%となりました。情報用紙は、主力のPPC用紙を中心にデジタル化や価格改定による需要家の使用量削減により対前年94.7%となりました。いずれの品種もマイナス幅が拡大しています。
印刷用紙の市況は、2022年からの3回に亘る値上げを実施したことにより需要減少が加速しましたが、製紙メーカー各社は減産による需給調整を進めており、2023年2月の値上げを最後に横這いで推移しています。
石化品については、原油・ナフサの下落分がエネルギーコストの上昇分で相殺される形で、概ね横這いで推移してきましたが、2023年の年初からメーカー各社が再値上げを打ち出しています。ナフサ等、原料価格の上昇分やエネルギーコストの上昇分に加え、労務費や物流費の上昇分の転嫁が新たな値上り要因となっています。物流2024年問題と併せて、部会員各社に共通する新たな課題となっています。
このような厳しい環境の下2023年度の資材部会は、月1回の定例部会をリアルとリモートを併用で開催し、用紙・フィルム・関連資材・エネルギー等の需給と価格動向の実態把握ができるよう、コンプライアンス遵守前提での連携強化を図り、各社に的確な情報の提供を行いました。
また6月には、昨年に引き続き、製紙工場の見学会を開催し、王子製紙㈱苫小牧工場を訪問しました。

教育・研究部会

2023年度も引き続き、会員企業の持続的発展に向けて、「事業基盤の強化」及び「人材育成支援」、「SDGsや環境問題への対応」等に資する活動を推進した。
他の部会とも連携・情報共有しながら、年間を通じて、有効性の高い多様な講演会・セミナーの企画・運営に努めた。
「9月印刷の月」の特別講演会、2022年から継続的に行っている「Printing for SDGsセミナー」の2回の開催のほか、年末会員懇談会のセミナーの支援なども行った。

■実施実績
◇2023年8月 「9月印刷の月」協賛特別講演会
・日時 : 2023年8月22日(火) 16:00~17:30
・講師 : 井上 智洋氏(駒澤大学准教授)
・演題 : 「人工知能は未来の雇用・経済をどう変えるか」

◇2023年7月 【Printing for SDGsセミナー】第4回
・日時 : 2023年7月19日(水) 16:00~17:30
・講師 :NPO法人 施無畏(せむい) 遠藤久憲代表理事
・演題 :「障がい者雇用の実態と課題」
~「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」のさらなる推進に向けて~

◇2024年3月 【Printing for SDGsセミナー】第5回
・日時 : 2024年3月18日(月) 16:00~17:30
・講師 : 一般社団法人 フェーズフリー協会 佐藤唯行代表理事
・演題 : 「平常時と災害時の垣根を越え、安心して豊かに暮らせる社会の実現へ」
~2つのフェーズをまたいで活躍する商品・サービスの創出に向けて~
   

技術部会

・技術部会では、今年度から若手メンバーを増員し知識の共有を深めながらPIDの編集 企画や勉強会、見学会の開催を通して関連業界の各種技術情報を得て発信しています。

1.技術情報誌PIDの企画・発行
・技術情報誌PIDを186号から189号まで発行し、各号の特集記事となる「技術レポート」を企画・編集しました。
・4月発行の186号では2本立てで「小ロットカタログのジャストインタイム印刷&デジタル印刷のサブスクリプション事例」の紹介(㈱広済堂ネクスト)と「コート本紙対応の水性IJ連帳PODと後加工連携による多品種印刷物制作自動化」(㈱SCREEN GPジャパン)を掲載。7月発行の187号は「最近の古紙リサイクル事情」 (日本製紙㈱)、10月発行の188号は「日本におけるG7認証制度の展開」(学校法人日本プリンティングアカデミー)、更に1月発行の189号では、デジタル本紙校正ソリューション「SCREEN Proof Jet F1100AQ+GMG OpenColor」(㈱SCREEN GPジャパン)を企画・掲載しました。
・「技術ダイジェスト」については、毎号部会員全員がニュースリリースを中心に注目すべき記事候補を選択、投票にて掲載決定記事を7件に絞り込み、原稿を執筆していますが、近年「印刷」というキーワードの記事がとても少なくなっており、記事候補を探すことにやや苦労しています。

2.見学会・勉強会の開催
・7月に「ミズノプリンティングミュージアム」を見学いたしました。印刷文化賞を受賞された水野 雅生館長ご本人から丁寧な講義と説明をいただきました。貴重な展示物を収集された努力やその展示物を素手で渡してくださり触れ合える展示方法など、水野館長の印刷への深い想いや貴重な印刷技術を伝承する姿勢を学びました。
・また、㈱SCREEN GPジャパン様には、9月に「蛍光ピンクデジタル本紙校正ソリューション」に関する勉強会、11月には江東区越中島にある「SCREENホワイトカンバスMON-NAKA」を見学。彩度の高い印刷が可能な両面機やポスターから医薬品ラベルなどの様々なデジタル機のデモ印刷やマシン内部の説明を受け、マイクロ文字などの品質の高さを知りました。
・12月は勉強会をニッカ㈱にお願いして、「LED殺菌付き照明」について紹介いただきました。

女性活躍推進部会

1. 月1回の定例会議では、課題検討からテーマを決め、活動の企画・運営について議論し、実施。
2.学生大学訪問やオンラインによる取材を行い、社会人を目指す学生に対する各大学の取り組み方を取材
3.大学教授を招きジェンダード・イノベーションの可能性についてセミナーを開催
具体的な活動内容は次の通りです。

1.定例会議
年間12回の定例会議を開催し、大学訪問ヒアリングの企画検討、セミナー開催の企画・運営・実施の議論実施。

2.大学訪問
(1)中央大学ビジネススクール
  訪問日:2023年7月4日(火)
  訪問先: 戦略経営研究科 露木教授
  取材内容:大学でのダイバーシティ取り組み方について

(2)愛知淑徳大学
  取材日:2023年9月7日(木) オンラインによる取材
  取材先:心理学部 心理学科 坂田教授
  取材内容: ジェンダーダイバーシティプログラムについて(開発背景、課題、活動成果と効果、学生の気づき)

(3)日本女子大学
  訪問日:2024年1月29日(月)
  訪問先:社会福祉学科 小山教授(ダイバシティ委員会委員長)ほか
  取材内容:トランスジェンダー女性の受け入れや、障害のある学生への在学中の支援に関することを中心に、活動の経緯・背景・その啓蒙啓発・教育などの取り組みを聞く。

3.セミナーの開催
  日時 2024年1月30日(火)14:00~15:30
  講師 お茶の水女子大学 理事・副学長 石井クンツ昌子氏
  演題 「ジェンダード・イノベーションの可能性について
~性差の研究から学ぶ、ビジネスへのヒント!~
無知学の定義づけや、わかり初めてきた性差(男と女)による気づきなどの内容が特筆すべきものでした。性差による気づきとは、今まで男性を基準にした製品開発を行い世に送り出してきていたが、実は最近になって男と女の身体的性差による製品の適合性・非適合性などがわかり始めてきたとのことです。そこで、性差だけでなく、年齢や経験などの要素も複合的に絡み合い、ジェンダーイノベーションが、ジェンダーフリーへの道を開き、新しい医療・製品・プロセス・サービスなどビジネスチャンスも広がるとのことです。
本講演を聞いて、ジェンダード・イノベーションへの期待はビジネス社会にも大いにあると感じました。

4.他団体、他部会との連携
 (1)日印産連を通じて他団体へセミナーの案内を展開、印刷工業会 会員以外の8社がセミナーへ参加
 (2)商業印刷部会「新年講演会・交歓会」へ参加
   
 

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