活動報告

昨年度の部会活動実績

2024年度部会活動実績

出版印刷部会

出版科学研究所による2024年(1~12月期累計)の紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、1兆5,716億円と前年比1.5%の減で3年連続の前年割れとなりました。このうち紙が5.2%減の1兆56億円とかろうじて1兆円台を維持。対して電子出版が同5.8%増の5,660億円と拡大しましたが、紙の落ち込み分をカバーできませんでした。
こうした中にあって2024年度の出版印刷部会では、従来からの「物流」「雑誌BCP」「本・印刷の魅力の発信(らぶっく)」の分科会活動を継続的に実施しました。出版業界全体の継続的取組みとしては、2023年度の出版5課題・原材料高騰に伴う値上げ要請に引き続き、2024年度も印刷業界全体の課題解決に向け「製本・納品工程に関連する7課題」・ 「データ保管期限のガイドライン」を各関連団体(日本雑誌協会、日本書籍協会、日本出版取次協会)に対し申し入れを行うとともに、課題解決に向けて、業界団体連携による出版文化を守る「持続可能な出版サプライチェーン」の再整備に関する協議を各関連団体対し展開しました。
また、各関連団体に申し入れた出版製造課題をもとに、2017年に発行されたガイドBOOKを近年の労働環境・ICT環境の変化に対応するべく内容をリニューアルし、出版社・取次業界に対し徹底を図ることを目的として新たに「2024 出版ビジネスにために-あらためておさえておきたい10の基本」を策定し、印刷工業会HPにて11月に発信しました。
【物流分科会】(計6回開催)
2024年度の分科会活動としては、出版印刷部会で申し入れた「製本・納品工程に関連する7課題」を元に、得意先に対し要請の内容を絞って、個社対応をしやすくするべく、各社の物流部門の課題を抽出・共通化し、併せて進捗について共有してきました。今後、物流分科会では①全体総量減少に伴う配本日数の短縮、②週刊誌の納品時間に余裕が欲しい、③少量納品の際の「パレットのその場回収」、④版元様からの「本伝票」の授受の廃止、⑤配本通知内の納品場所の住所・電話番号・御担当者様の明記の徹底といった課題解決に向け、引き続き、活動を展開していきます。
【雑誌BCP分科会】(雑誌BCP分科会 計5回開催、3団体による雑誌BCP共同分科会 計4回開催)
前年度に引き続き、2024年度もオンラインによる「緊急協議開催訓練」に向けて、日本雑誌協会・日本出版取次協会との共同分科会を通じて有事における対応について協議しました。24年度の重点課題である、第1回協議後の継続的情報共有、第2回緊急協議の開催条件などを踏まえ、本年2月に3団体にて「緊急協議開催訓練」を実施しました(リモートで見学者含め27名が参加)。尚、3月のBCP共同分科会(訓練総括会議)では、雑誌BCP分科会の取組みが約10年経過し、一定の成果が得られたとの認識の元、3団体で協議し、2024年度をもって従来の形での活動については一旦休止し、新たな形での運用を検討していくこととなりました。
【らぶっく分科会】(計11回開催)
らぶっく分科会は2つのWG(イベント施策・SNS施策)に分かれて活動を展開しました。イベント施策については、本と出合うきっかけを創出することを目的として「本の贈り合いイベント」の企画・運営に関する活動を展開。その結果、11月1日(本の日)を目途に、らぶっく分科会各社にて「本の贈り合いイベント」を開催しました(参加企業10社、参加延べ人数 518名)。SNS施策については、紙・印刷・造本などの魅力や面白さを伝えることを目的として、10月よりInstagramでの情報発信を開始し、3月末時点で約30コンテンツを配信しております。
「ブックサンタ2024」も前年度同様、B2ポスター拡材を製造し提供しました。その結果、参加店舗数1,868、寄付冊数130,843冊(リアル書店111,217冊、オンライン書店16,374冊、クラウドファンディング3,252冊)と前年度より2.7%増加しています。
※以上の分科会活動の他、例年通り日本雑誌協会からの要請を受け、四半期毎に印刷各社へ雑誌印刷部数証明の調査をお願いし、年度の「マガジンデータ」の発行に協力しました。
 

教科書印刷部会

2024年度は部会を通じて業務に関する情報だけにとどまらず、会員相互の資質向上に役立つ部会活動を図って参りました。年間活動としては3回の見学会を含め計8回開催しました。

《主な活動内容》
1. 定例部会(2024年5月15日、7月4日、9月19日、12月4日、2月5日)
定例部会では2023年度活動報告及び2024年度活動方針について、部会メンバーと内容を共有するとともに、今年度の見学会候補について検討し、計3回の見学会を実施することとなりました。9月19日の定例部会では、グリーンプリンティング(GP)認定制度の概要と活用について、日印産連より説明を受け、部会メンバーにて内容を確認しました。今後、教科書に同制度を展開し、GPマークの表示が可能かどうか検討していくこととなりました。12月4日の定例部会では「令和7年度 中学校見本本調査」の内容について、部会メンバーにて意見交換を行いました。2月5日の部会では、中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会の下に設置された「デジタル教科書推進ワーキンググループ」の内容に関し、情報を共有しました。
 2.「令和7年度 中学校  見本本」の調査
 22発行者、14教科、142書目の令和7年度中学校見本本を対象として、調査内容に対し意見交換を実施しました。令和7年度の特徴として、教科書にQRコードが掲載されデジタルとアナログのハイブリット版や、植物性インキの使用などによる環境配慮の傾向が見受けられました。
3.「東京書籍株式会社附設教科書図書館 東書文庫」の見学会を実施 (2024年7月4日)
  東京都北区にある「東書文庫」の見学会を実施しました。同施設は1934(昭和 9)年、東京書籍の創立25周年を記念して企画され、1936(昭和11)年に開館したわが国で最初の教科書図書館です。当日は、展示ルームにて、江戸時代から現代にいたるまで、各時代の教科書を中心に所蔵資料の一部を、館長の説明とともに見学しました。
 4.「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」の見学会を実施 (2024年11月13日)
  東京都千代田区にある「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」の見学会を実施しました。同施設は日本における文化コンテンツのデジタルアーカイブを推進し、観光立国・地方創生の実現を推進・支援するための共創・発信スペースとしてTOPPAN㈱が運営しています。当日は、「ツーリズムギャラリー」や「VRテクノロジーギャラリー」、メタバース体験ができる「フューチャーワールド」等を紹介していただきました。
 5. 「市谷の杜 本と活字館」の見学会を実施 (2025年3月6日)
  東京都新宿区にある「市谷の杜 本と活字館」の見学会を実施しました。同施設は印刷の原点である活版印刷と本づくりの工程を見て、学んで、体験できるリアルファクトリーです。当日は、活版印刷で本をつくる流れを、6つの工程に分けて紹介していただきました。

 

商業印刷部会

2024年度の商業印刷部会は「運営委員会」と2つのグループ会(CR会・R&D会)の活動での構成により運営されました。「運営委員会」では、商業印刷部会全体(31社)を対象とした2回の「勉強会(セミナー)」、10月の「商印ゴルフ会」、夏季・期末の2回の「懇親会」、1月の「新年交歓会」、3月には会員各社を対象とした「商印アンケート調査」の結果報告を実施しました。なお、1月の「新年交歓会」につきましては、今年度の部会費の運用について見直しした結果、昨年度からの運営を見直し、日本出版クラブホールにて規模を縮小して実施しました。
また、2024年度の商業印刷部会のテーマとして「商業印刷部門における次世代の人材育成の在り方」について検討することとし、2グループ会とともに現状と課題について共有していくこととしました。上記の内容を含め、2024年度の運営委員会は計7回開催しました。
「勉強会(セミナー)」の内容については以下となります。
・第1回 勉強会 … 電通メディアイノベーションラボ 研究主幹 北原 利行氏
(7月18日)     「2024年のメディアと印刷市場展望」
・第2回 勉強会 … 株式会社文星閣 取締役CSO戦略本部 戦略本部長 奥 武士氏
(11月18日)   「文星閣 DX航海日誌:印刷業界の未来を切り拓く戦略と実践」
 
2024年度の2グループ会での活動内容としては、商業印刷部会の共通テーマ「商業印刷部門における次世代の人材育成の在り方」に関し、相互の連携を図りました。2グループ会で共通テーマに関する進め方について協議し、グループ会毎にメンバーに対し「DXに関する人材育成」に関するヒアリングを実施し、現状の把握と課題について、その内容を共有しました。
他に、グループ会独自で開催した見学会は以下となります。
 【CR会】
・6月13日 …東京都中央区にある高品質な総合印刷サービスを提供する㈱セントラルプロフィックスの見学会。大判UVインクジェットプリンタ、及びデジタル加飾・箔処理システムによる厚盛箔印刷のデモンストレーション等を見学。
・11月21日…東京都港区の公益財団法人吉田秀雄記念事業財団が運営する日本初の広告専門のミュージアム「アドミュージアム東京」の見学会。江戸期から現代まで6つの時代区分で構成された常設展示室にて、日本の広告の歴史を見学。
 【R&D会】
・ 5月10日…商業印刷部会の他メンバーも含め、東京で行われる製版工程以降の全工程に対応する図書印刷(現 TOPPANクロレ)のメイン工場である沼津工場を見学。
・11月14日…東京都中央区の株式会社東京証券取引所「東証アローズ」の見学会。東京証券取引所の歴史、証券市場の仕組みと機能、証券取引所の役割、東京証券市場に関するTopicの説明と併せて見学。

紙器印刷部会

1.市況及び業界動向の共有
●『得意先業界の景気状況』を四半期ごとに報告いただき、内容集約し、部会で共有しています。
2024年度は、1年を通じて製品値上げが浸透し、業界全体では金額ベースで前年度を上回る得意先製品群が多くありました。一方、数量ベースでは前年度を下回る製品も多く、規模の面においては厳しい状況が続きました。その中でも特に好調だったカテゴリーは、菓子(チョコ、アイス)です。カカオ高騰により販売価格の上昇が懸念される中、予想に反して好調に推移しました。また土産需要の回復も顕著で、数量ベースでも前年度を上回る製品群が多く見られました。さらに、生活者の節約志向の高まりにより、PB品が台頭する一方で、トイレタリー関連は低調な推移となりました。また、夏場の猛暑によりスティックコーヒーやカップスープが一時的に振るわず、製品値上げのタイミングとも重なったことから、販売数量は顕著に減少しました。化粧品関連では、国内販売は回復傾向にあるものの、中国国内の不況を受けて輸出が苦戦し、前年を大きく下回る推移となりました。一方、医薬品はインバウンド需要により好調で、年間通じてジェネリック品が需要を牽引しました。
  ●『取引慣行改善の取組み』は「価格転嫁促進」と「2024年物流問題」が議論の中心となりました。
パレット輸送による課題解決策や、モーダルシフトによるコスト吸収策についても活発に議論さ れました。さらに経営指標達成に向けて、滞貨品引取交渉や倉庫費用回収交渉、支払サイト短縮 交渉など、積極的な交渉を実施する企業が増加しました。

2.その他の取り組み
  ●「包装産業出荷統計調査結果」や「新聞各紙」をはじめ「部会員からも業界関連情報」を頂き、価値ある情報量の増加と共有に努めました。
  ●2回の研修会を実施。昨年12月「霧島酒造株式会社(宮崎県)」を訪問。
ユネスコ無形文化遺産に登録された焼酎製造とその生産ラインを見学しました。液体容器が提供する機能価値(保存性、利便性、意匠性)について議論を深めました。
本年3月には、新富士にある紙のリサイクラーでトイレットペーパーを製造する「コアレックス信栄」を見学しました。「すべての紙を資源」と捉え、「紙の地産地消」にこだわる確固たる信念を持つ企業です。富士宮エリアを中心に地域貢献活動に取組み、災害時には全国被災地へ製品を供給するなど、積極的な社会貢献活動を目の当たりにし、社会の公器として役割を全うする企業姿勢に共感する貴重な体験ともなりました。

3.若手育成セミナー開催(2025年3月5日)
●軟包装部会と共同で、(有)ピクトワークス代表取締役 渡瀬 謙氏に
「なぜ口下手・あがり症の私がトップ営業になれたのか~しゃべらなくてもお客様の心をつかむ コツ~」というテーマで、90分間の貴重なお話を頂きました。紙器と軟包装の両部会のメンバー が参加し、講演後の懇親会では、講師の渡瀬氏を交えて118名が交流しました。

軟包装部会

1.原材料価格動向の把握
・ 国産ナフサ価格の状況は、2022年4~6月期の86,100円/KL(最高値)から徐々に下落していまし たが、2024年度には70,000円台/KLで上下する動きとなり、価格交渉はさらに難しい状況が続 いています。

2.情報共有と取引慣行改善活動の推進、他
  ・毎月の部会では各社の市況報告が行われ、前半の売上は前年を上回ったものの、得意先がリニューアル品を控えていることや、原材料の供給不安などの影響で、仕事量は減少しています。夏場は猛暑の影響で飲料関連が好調でしたが、10/1からアルミ箔の値上げが決定したため、即席めんの蓋材に大きな影響が出ています。また製造現場では、働き方改革の影響により、人手不足や外注先の確保が難しく、支障をきたす場面も生じています。
・長期在庫の取り扱いについては、各社の状況が異なるため、できるだけ在庫期間を短くし、極力在庫を減らす方向で注力することとなりました。また、物流面ではパレットのワンウェイ使用を避け、チャーター便などを利用して回収する方向で進めています。

3.見学会の開催
・6年以上も見学会を開催していなかったため、どこに行くか部会内で話し合った結果、名古屋にある「トヨタ産業技術記念館」に決まりました。繊維機械館では、日本独自の技術で作られた精紡機を見学し、印刷技術と関連するようなイメージを持ちました。隣接する自動車館では、自動車事業の創業者である豊田喜一郎氏が掲げた「国産自動車事業の実現」という夢を向かって進んできた道のりを学ぶことができました。

4.若手育成セミナーの開催
・軟包装部会と紙器印刷部会で講師投票選考の結果、(有)ピクトワークス 代表取締役 渡瀬 謙氏に、2025年3月5日に「なぜ口下手・あがり症の私がトップ営業になれたのか?~しゃべらなくてもお客様の心をつかむコツ~」についてご講演いただきました。リクルートに入社して10ヵ月目で、全国営業達成率トップになった渡瀬氏は、営業は根性や気合だけではなく、内向的な性格でも体系的に行動すれば結果を出せることを実証されました。営業のゴールは「信頼」であり、その信頼を得るためにはウソをつかず、約束を守り、常にお客様視点で行動するという、当たり前のことを徹底する重要性を教えていただきました。参加者は、部会員を含む118名で、終了後には懇親会が開催され、名刺交換など交流の場が設けられ、大変好評でした。

液体カートン部会

1. 運営委員会
・ 今年度も6月・9月・3月に委員会を開催し、技術委員長、環境委員長より各々の活動報告を受けました。また毎年1月は全体会議で委員全員が集まり活動内容を共有しています。技術委員会からは過去の活動記録(2009~2023)を報告し、来年度の活動テーマを報告、環境委員会は、年間活動と来年度の活動計画及びアルミ付飲料用紙容器のリサイクルの現状を報告しました。
2.環境委員会
・アルミ付飲料用紙容器のリサイクルについて、昨年同様事業委託先のNPO法人「集めて使うリサイクル協会」と連携して施策を推進しました。2023年度の使用済みアルミ付紙パックの回収率は3.6%と+0.2Pと微増、スーパー店頭回収でのアルミ付比率の上昇が主な要因です。
・「アルミ付飲料用紙容器のリサイクルフロー調査」に係る組成分析調査は、2回実施しました。12月兵庫県西宮市にあるコープこうべ鳴尾浜配送センターにてコープこうべの店頭回収品500㎏2月は埼玉県新座市の山田洋治商店にてスーパー2か所の店頭回収品400kgと150kg計550kgを仕分け分類して数値化しました。この調査結果を含めた「2024年度アルミ付飲料用紙容器のリサイクルフロー調査報告書(2023年度実態)」を3月末に発行しました。
・「酒パックリサイクル促進協議会」は、5月・9月・2月に運営委員会、7月定期総会、3月中旬に第46回情報交流会を開催しました。運営委員会では調査部会・広報部会から活動報告をいただきました。
・「LL紙パックリサイクル推進研究会」は、5月・10月・3月に運営委員会、臨時委員会も開催し、アルミ付紙パック回収における課題整理を中心に話し合いを行いました。情報共有化勉強会は3月末に実施しました。
・12月4~6日に開催された「エコプロ2024」の来場者数は6.3万人と減少。アルミ付紙パックの回収率が僅かであることを明確に表示し、再生紙工場の製造工程をイラストで表現しました。
3.技術委員会
・今年度のテーマを検討する上で、「技術委員会の過去の活動記録」に基づいて活動を振り返りました。その中から、2019年に取り組んだ「環境負荷に関する紙容器の優位性についての考察」を元に各社の環境に対する考えや具体的な取り組みを共有しました。また、11月には日産自動車横浜工場を見学し、技術者の凄さを目の当たりにしました。

 

建材部会

1.4VOC自主表示制度の継続運用
・放散速度値の測定は、各社3年に1回ごとで検査測定を実施しています。今年度は4回目の1年目につき、運用規則に則り会員5社を選定、6~8月に4VOC放散速度値の測定を実施し結果はいずれも基準値内でした。来年度は3社で実施予定です。
・4VOC製品登録件数は、2025年3月末時点で47,520件、2024年4月以降からの1年間では登録が673件、不要な製品削除が6,495件となりました。
・エチルベンゼンの放散速度基準値が今年度中に変更されることを受け、4VOC放散に関する自主表示制度規程及び運用細則の内容を改めて見直すことにしました。全員にアンケートに回答いただき、意見をまとめた上で4VOC不使用のタイプ1に関する内容や原材料メーカーへの化学物質調査を実施するといったより厳しい方向で進めていくこととしました。
2.化粧板用印刷紙の合法性証明制度の継続運用
・2015年11月より認定実施要領に則り、制度運用を開始しています。事業者認定に関しては3年に1回更新をお願いしておりますが、今年度の更新は4社となりました。
・2024年度の証明書発行回数の実績は前年度より61回増の325回となりました。年度末には、各社より「合法性の証明された製品等の取扱実績報告」に発行回数を記入、捺印、提出いただき集計結果をHPに掲載しています。
3.部会活動で取組み
・今年度の部会開催は6回、環境委員の方も常に参加いただきZoomを併用した中で市況報告や運用細則の変更内容について討議を重ねてきました。建材業界は国内/海外共に総じて不調が続いていて、国内の不調は住宅着工数減少が影響しています。また原材料全般の値上げや、採算が取れていない品番の統廃合等も多く、代替品の対応に苦慮しています。そして、工場従業員の年齢が上がる一方で中間世代や若手の人材不足の課題は各社共通です。
・今年度も関西地区の部会員の方が参加しやすいように、10月に京都で「松下記念館」と「京都迎賓館」の見学会を開催しました。松下幸之助の思想・哲学の一端を学び『素直な心』について自己診断を行った後、京都御所に隣接した京都迎賓館に移動し、素晴らしい建築構造や材料に触れ、京都を代表する西陣織、漆、蒔絵等の調度品を拝見させていただき、日本の技術力の高さや歴史を深く感じました。

情報セキュリティ部会

2024年度の情報セキュリティ部会の活動は、セキュリティ関連に係らず、社会課題の解決に向けた幅広い業界における知識・知見を身につけることを第一義におき、それによる会員各社の新しいビジネスへの挑戦の後押しができるよう、進めて参りました。また、旧証券印刷部会として、昨今のデジタル化や環境対応・材料メーカーの方針転換等による証券印刷物への影響を鑑み、材料や素材を含むサプライチェーンに関する業界課題等の情報共有を図って参りました。さらに会員メンバーの日頃の意思疎通もスムーズに行くように、適宜懇親の場も積極的にも設けて参りました。結果、年間の活動開催回数としては、勉強会を2回(10月、12月)、見学会を2回(7月 、3月)、定例部会を3回(5月、10月、12月)、加えて臨時部会を数回開催するなど、年初の計画を踏まえ、部会活動を展開してまいりました。
【勉強会】
① 開催日 : 2024年10月1日(火)
  講 師 : 佐藤一郎 教授 (国立情報学研究所)
  テーマ : 生成AIの最新ビジネス活用と留意点
  内 容 : 生成AIの仕組み、応用の方向性の紹介の後、フェイク画像、ネガティブステルスマーケティング、生成AIの利用における情報漏洩問題、著作権問題等、実例を交えながら、生成AIのリスクと影響、及び今後の生成AIと企業ビジネスに関する方向性について講義していただきました。< ② 開催日 :  2024年12月2日(月)
講 師 :  伊藤正裕氏 (㈱パワーエックス 取締役兼代表執行役社長CEO)
テーマ : 「国産蓄電池が創る、再エネ爆発的成長の未来」 ~永遠にエネルギーに困らない地球~
  内 容 :  ㈱パワーエックスは再⽣可能エネルギーの課題である「安定供給」に対して、⼤型蓄電池の製造・販売、再⽣可能エネルギー等の電⼒供給など幅広く事業を展開しています。
当日は、国内外のエネルギー情勢を踏まえ、蓄電池製品とその導入事例やチャージステーション事業などについて紹介していただきました。また、伊藤社長が描く事業のビジョンや新規事業への取り組みに関する考え方についても講演していただきました。

【見学会】
① 開催日 :  2023年7月5日(金)
  場 所 :  株式会社 JERA 川崎火力発電所 (神奈川県川崎市)
  概 要 : 世界最高水準の熱効率を誇る発電システムを採用。近隣に蒸気の供給を行うなど、CO2削減に貢献する最先端火力発電所

② 開催日 :  2025年3月4日(火)
  場 所 :  キリンビール 横浜工場 (神奈川県横浜市)
  概 要 :  全国に9箇所ある生産工場の中で、最古の歴史を誇るキリンビールの主力工場

資材部会

 2024年度の国内経済は、物価高騰による支出抑制の影響は依然大きく、個人消費の回復は緩やかなものに留まる一方、インバウンド消費はさらに拡大し、訪日観光客数は対前年147.1%で、3600万人を突破し過去最多となりました。 また、訪日客の旅行消費金額は対前年153.4%の8兆1000億円を超え2年連続で過去最高を更新しました。 支出目的別では、買い物代の構成比は増加しており、「爆買い」ほどのインパクトではないものの、消費の下支えとなっています。
こうした経済情勢の下、日本製紙連合会によると2024年1月~12月の紙・板紙の国内需要は対前年97.2%で、パッケージング用紙、グラフィック用紙ともに前年割れとなりました。
・ 新聞用紙は、夕刊廃止による発行部数減少、広告出稿減によるページ数減少は依然続いているものの、うるう年による発行日数増によりマイナス幅は縮小し、対前年91.1%となりました。
・ 非塗工印刷用紙は、デジタル化や出版不況に加えて、商業印刷を中心に需要家のコスト削減による使用量減少も影響し、対前年94.1%となりました。
・ 塗工印刷用紙は、デジタル化による構造的要因に加えて需要家の販促費抑制により、カタログ・チラシ・パンフレットが減少し、対前年92.6%となりました。
・ 情報用紙は、リモートワークやWeb会議の定着・拡大によりペーパーレス化が進んでおり、主力のPPC用紙の使用量削減が続き、対前年94.7%となりました。
印刷用紙の市況は、5月以降メーカー各社から発表された再値上げに始まり、白板紙や特殊紙の値上げも五月雨式に発表され、値上げはほぼ全般に拡がっています。
また、印刷需要減に伴う販売量減少の中、インキやCTPプレートにつきましても、メーカー各社から値上げが打ち出され、安定調達のためにこれを受け入れてきました。さらに、需要が比較的堅調な軟包装分野におきましても、石化品の高止まりや中国産アルミの実質値上げなど、原材料コストの上昇は共通課題となっています。
このような厳しい環境の下、2024年度の資材部会は、月1回の定例部会を開催し、印刷用紙・フィルム・関連資材等の需給を価格動向の実態をタイムリーに把握できるよう、コンプライアンスを前提とする情報共有を行ない、連携強化を図りました。8月には、日本製紙白老工場の見学会を開催し、会員相互の研鑽と親睦を図るとともに、サプライヤー企業様と資材部会とのパートナーシップを醸成しました。

教育・研究部会

2024年度も引き続き、会員企業の持続的発展に向けて「事業基盤の強化」及び「人材育成支援」「SDGsや環境問題への対応」等に照準を当て、年間を通じ有効性の高い多様な講演会・セミナーを企画・立案し運営に努めて参りました。
具体的には、2022年から継続的に行っている「Printing for SDGsセミナー」を2回開催し、「9月印刷の月」の特別講演会や年末会員懇談会のセミナーの支援を行いました。

■活動実績
【直接運営】
◆2024年11月【Printing for SDGsセミナー】第6回
・日時:2024年11月28日(木) 15:00~16:30
・講師:吉川 和徳氏(理学療法士)
・演題:「老いと介護、多様性を考える」~生活機能と障害の理解~
  ・概要:障害の捉え方(医学モデルと社会モデルについて)

◆2025年3月【Printing for SDGsセミナー】第7回
・日時:2025年3月14日(金) 16:00~17:30
・講師:石田 光規 氏(早稲田大学教授)
・演題:「つながらなくてよい時代の人間関係を考える」
     ~つながりをどうお膳立てするか~
・概要:コロナにより人とのつながりの減少で深まる孤立をどう解消してゆくか

【企画支援】
◆2024年8月「9月印刷の月」協賛特別講演会
・日時:2024年8月21日(水) 15:00~16:30
・講師:石川 和男氏(時間管理コンサルタント)
・演題:「仕事の能率を劇的に変える効果的な時間術」
・概要:時間の使い方を見直し仕事の効率性を上げ生産性を向上するには

◆2024年12月 年末会員懇談会 セミナー
・日時:2024年12月12日(木) 16:30~17:30
・講師:中村 朱美氏(株式会社minitts 代表取締役)
・演題:「仕組みで人を幸せに」~働きやすさと会社利益の両立~
・概要:人手不足にならない組織づくり、発想力と行動力で新規事業を

※「Printing for SDGsセミナー」とは、印刷工業会会員に向けて、印刷業界ならではのテーマ、普段接することがない社会的要請の高いテーマ、会員からの要望が多い実務的テーマ等について官公庁やNPO団体の専門家等を講師に迎え、継続的に年2回程度開催してゆくセミナーです。
   

技術部会

・技術部会では、昨年度から若手メンバーを増員し知識の共有を深めながらPIDの編集企画や勉強会、見学会の開催を通して関連業界の各種技術情報を得て発信しています。

1.印刷技術情報誌PIDの企画・発行
・印刷技術情報誌PIDを190号から193号まで発行し、各号の特集記事となる「技術レポート」を企画・編集しました。
・4月発行の190号では「デジタルプリントを起点としたビジネス展開について」の紹介(TOPPAN㈱)。7月発行の191号は「創造性を解き放つアドビの生成AI~安全性を考慮した設計思想と信頼性を担保する仕組みとは~」(アドビ㈱)、10月発行の192号は「製版最新技術と今後の動向」(ヘリオグラフ・ジャパン㈱)、更に1月発行の193号では、「見える化の次の一手!プリプレス工程の自動化事例~スキルレスフローの実現に向けて~」(富士フィルムグラフィックソリューションズ㈱)を企画・掲載しました。
・「技術ダイジェスト」については、毎号部会員全員がニュースリリースを中心に注目すべき記事候補を選択、投票にて掲載決定記事を7件に絞り込み、記事の中に図を掲載するなど、各自工夫を凝らして原稿を執筆しています。

2.見学会の開催
・6月に(旧)図書印刷㈱沼津工場を見学しました。会社の歴史や製品、顧客からの感謝状の展示を見た後、骨組みの設計からこだわりのある沼津工場内では、教科書やコミックを中心とした印刷加工設備や最新のUVオフ輪機、更に絵本や図鑑の合紙専用製本機やコミック本にカバー・帯・小冊子を一度にセットする等、日本に数台しかない加工機が稼働していました。
・12月にはTOPPAN㈱川口工場を見学しました。8棟と呼ばれる建物のうち、刷版、オフセット輪転機、製本ラインを紹介いただきました。輪転機の回転数や能率の稼働状況、エネルギー利用状況などをパネルで見える化したところや、自動で刷本パレットを搬送するところなども見せていただき、働きやすい環境づくりに取り組まれていると感じました。

ダイバーシティ推進部会

■基本方針
ダイバーシティ推進を通じた「印刷業界を働きやすい業界へ」の変革
※2023年度までの女性活躍推進部会から名称変更あり

■活動テーマ
D&I推進の最前線を学び合う

■活動概要
部会名称が変わった初年度であった本年は、ダイバーシティ推進に係る知見をメンバー間で学び合い、得た情報を各社に持ち帰り生かすことを主軸として活動を実施

■活動詳細
1.最新事例のシェア
業界内外のダイバーシティ推進に関する取組を調べ、部会で発表し議論を実施
〈報告内容〉※一部抜粋、発表順に記載
・共同印刷㈱ 「残業削事例」
・TOPPANエッジ㈱「介護施策について」
・宝印刷㈱ 「週休3日制のトライアル導入」
・TOPPANホールディングス㈱
「さらなる女性活躍推進に向けたTorch Lightプログラム」

2.部外での活動
(1)女性のキャリアを考える座談会
  2024年10月25日 大日本印刷㈱ 宮間常務をお招きして座談会を開催。キャリア形成における視点や両立に関するアドバイスをいただく。

(2)女性の健康保持増進体験学習
女性の健康維持・促進を図ることをテーマと、2025年1月15日、六本木のYumiCoreBodyを訪問し、体験学習を実施。健康保持増進による生産性向上について、知見を深める。

3.他団体との交流
  2025年1月17日開催のGWP(GIRLS WHO PRINT JAPAN)のイベントに参加し、印刷他社や印刷機メーカー(エプソン、リコー)の女性社員との交流を図る。
※今後の部会としての関与方法は、2025年度に方向性を定める予定
   
 

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